続アジア見てある記(69)

大韓民国(12)

アジア光俊

1.韓国鉄道

 韓国の鉄道で最上級の列車がセマウル号である。韓国鉄道の料金体系は、日本のように料金が一定で、その上に急行や特急料金が加算されるものではなく、列車の種類によって別々の料金になっているのだ。

セマウル号
セマウル号

 列車には、それぞれ1kmごとの料金が設定されており、普通列車であるピドゥルギ(鳩)号は14ウォン63チョン(1ウォン=100チョン)、トンイル(統一)号は26ウォン05チョン、ムグンファ(無窮花)号は40ウォン81チョン、セマウル号は59ウォン28チョンという具合だ。ピドゥルギ号の運賃を1とすると、それぞれ1.78、2.79、4.05となる。

 また上級列車ほど停車駅が少ないので所要時間も短く、プサン−ソウル間の444kmでは、セマウルで4時間10〜20分、ムグンファで5時間〜5時間20分、トンイル号では5時間半〜6時間となっている。所要時間だけでなく車両も違うので、値段の差は納得できる範囲かもしれない。

 韓国鉄道は、ダイヤ編成をどんどん変えてきており、長距離列車のトンイル号を減らして上級の列車に変えている。そのため今では400kmを超える長距離のトンイル号は5往復と2本しか残っていない。また、普通列車であるはずのピドゥルギ号も廃止され、都市近郊では各駅停車であるトンイル号都市通勤型列車に切り替わっている。

 昔のように、夜汽車に揺られてのんびり(と、言うより苦痛でもあるが...)、または昼間にゆっくりと景色を楽しみながら移動する、というような旅はできなくなっている。



2.セマウル号でソウルへ

セマウル号乗車券
セマウル号乗車券(特室)

 料金でいえば、特室(日本で言うグリーン車)の料金が弾力的になっていることが面白い。通常料金はチュソク(秋夕=お盆のようなもの)などの特定時期にのみ適用され、週末は2割引、平日は6割引となっているのである。これだと平日はプサン−ソウルでも3200ウォン(360円)だから、使う気にもなるだろう。しかし違いの方も、特室にはイヤホンと車内誌が備えつけられている程度で、座席も普通車が16列のところ、特室が15列というくらいの差だから、席の間隔の違いも大差ないのだ。

 ソウルへの切符を買おうとプサン駅へ行った。窓口でも販売しているが、横の方にはクレジットカードで買える自動販売機が置かれている。カードを入れて好みの列車を指定すれば良いという、誠に簡単便利なものなのだが、外国のクレジットカードだったためか、カードを受け付けてもらえず結局窓口で買うことになった。

 セマウル号は外国人観光客のことも考えて、韓国語だけでなく、英語と日本語によるアナウンスも行われている。日本でも福岡や大分などでは韓国語の案内板をみかけるが、それだけ関係が深いということだ。この車両内でも、スーツケースを持った日本人観光客が1組居た。

 窓の外は、都市に近づくと高層アパートが見られるものの、相変わらずの農村風景が多い。こんな中で時々鉄道工事をしている場所が現れることがある。現行の鉄道に変わる高速鉄道建設現場である。プサン−ソウルは、日本なら新幹線で2時間半しかかからない東京−米原と同じくらいの距離しかない。セマウル号の運命やいかに?



3.京義線7分の旅

 ソウルは広いので、ソウル駅についてからホテルまで距離がある。ホテルはシンチョン(新村)という場所にあるため、長い距離を歩く乗換えを2回やるよりも、このまま韓国鉄道のシンチョン駅に行ってしまった方が楽なので、1時間に1本しか走らない列車に乗ることにした。ちなみに料金は1000ウォンで、地下鉄の倍である。

 乗った線は京義線で、これは本来ソウルから北朝鮮の中国国境の街である新義州まで通じる線だ。現在はソウル北方46km地点にあるムンサン駅で中断しているが、本来は幹線中の幹線なのだ。

 車両は統一号都市通勤型列車で、4人掛けのボックスシートと長いベンチシートが混在している。乗客には買物袋を持ったアジュマと軍人の姿が目に付く。この線の沿線は、最近開発が進んできている場所だから、ソウルまでの買出し客も多いのであろう。また終点のムンサンは、軍事境界線の最前線であるから、休暇で出てきた兵士が帰隊するのに利用しているのであろう。昨年乗ったときには、休日の朝だったのでハイキングの格好をした乗客が多かった。

 ソウル駅からシンチョン駅までの所要時間は7分、距離3.1キロである。乗り合わせた中年男性乗客に一駅で降りると言ったら笑われてしまった。



4.銀行のスローガン

チェイル銀行
チェイル銀行ウットゥク!

 97年末の経済危機から2年近く経つが、財閥の倒産や解体が進んだだけでなく、銀行も国有化されたり合併・リストラを進めるなど、かなりの変化が見られる。

 街を歩いていて、いくつかの銀行でおもしろいスローガンや光景を見ることができた。

ハンビット銀行
ハンビット銀行
(右下には朝鮮商業銀行の看板が)

 チョフン(朝興)銀行では、「アップグレイド チョフン銀行 出帆!」と書かれたビル一面の巨大な垂れ幕がかかっていた。この銀行は2兆1500ウォン(約2000億円)以上の金融支援を受けているのだ。しかしその「アップグレイド」の見返りに、管理職の見直し、行員・支店数の削減をするとともに、自己資本利益率(ROE)15%以上、総資産利益率1%以上に引き上げることが義務付けられている。

 国有化されたチェイル(第一)銀行は、毎度韓国経済と結びつけたスローガンを掲げているが、今回は「チェイル銀行ウットゥク! 韓国経済ファルチャク!」となっていた。

 このウットゥクとは、「ニョッキリ(伸びる)」というような意味であり、ファルチャクとは、「ぱっと(花開く)」というような意味を持っている。いずれにせよ未来に向けて伸びていこうというスローガンだ。

 スローガンではないのだが、面白い光景は、チョンノ(鐘路)にあるハンビット銀行チョンノ支店にあった。このハンビット銀行はハニル(韓一)銀行と韓国商業銀行が合併して99年1月にできたものだが、この新しい看板の下には株式会社朝鮮商業銀行鐘路支店という戦前の看板が残っているのだ。

朝鮮商業銀行
朝鮮商業銀行鐘路支店

 スローガンではないのだが、面白い光景は、チョンノ(鐘路)にあるハンビット銀行チョンノ支店にあった。このハンビット銀行はハニル(韓一)銀行と韓国商業銀行が合併して99年1月にできたものだが、この新しい看板の下には株式会社朝鮮商業銀行鐘路支店という戦前の看板が残っているのだ。



5.韓国大売出し!

 実はこのゴールデンウイーク期間中、韓国では「コリア・グランドセール」と銘打って、外国人観光客向けに各種割引や記念品贈呈をしていたことをご存知だろうか? 4月28日から5月5日までだから、日本人観光客を狙っていたことは明々白々である。

コリアグランドセール
観光公社ビルにかかる
コリアグランドセール

 私は日本にいる時には、このようなものがあることを知らず、プサンに向かう船の中でグランドセールのパンフレットとクーポン券が付いた小冊子を手に入れたのであった。

 中身を見ると我々が泊まる予定のプサンのホテルもクーポン持参で20%引きとなっている。これは使わない手はない。チェックインの時に聞いてみると、本当に割り引きになり、期間が終わった帰国前の宿泊についても同じように割引をしてくれたのである。

 大体は土産物屋とか高級なレストランが対象になっているので、あまり使えるものではなかったが、ロッテ百貨店などの割り引きでは、ネクタイが安く買えたのでよしとしよう。

 利用に際してはロッテの場合、パスポート番号の確認をし、書類に何やら書きこみをした上で割引が適用された。クーポンは持って行ったのだが、店の方でも用意していて販売促進の手段として十分に活用していた感じがした。

 しかし、どのくらいの人がこれを利用したのか、また、どのくらいの売上増がもたらされたのかははっきりしない。



6.インターネット房

 今、というか、もう前の話だが、韓国ではインターネットが流行っている。一昔前だとあちこちに「ノレバン(うた房)」とか「ノレヨンスプジャン(うた練習場)」なるものが増殖していたのだが、最近のブームはインターネットなのだ。昔は「オラクシル(娯楽室)」と書かれたゲームセンターがあちこちにあったのだが、この客が「インターネット房」に来ているのだ。なぜならば、ここではインターネットだけでなく、コンピュータ・ゲームをすることも可能なので、多様なゲームを1台の機械でできる「インターネット房」に人気が集まるのも理解できる。

PC房
PC房はあちこちに!

 しかし人気の秘密はそれだけではなかったようだ。滞在中のテレビニュースで、あるインターネット房の経営者が逮捕されている。理由はポルノビデオなどのソフトをコンピュータにインストールし、客に見せていたためだ。インターネットで海外からダウンロードしたものではなく、韓国製のビデオソフトだから余計始末に負えない。このような事件が相次いで起っているので、テレビではインターネット房規制の是非を巡って討論会も開かれていた。

 肝心のインターネットの方だが、利用料金が1時間で1000ウォン(約110円)と、日本に比べて格段に安い。通話料金が3分間45ウォン(現在は55ウォン)だから、家でインターネットをやるのと比べても極めて安い価格設定である。知人が先日チョンノのインターネット房に行ったときは1時間2000ウォンだったと言うから、学生の多いシンチョンは特別に安いのかもしれないが、2000ウォンでも高いとは言えないだろう。

 私もここでインターネットをやってみた。中には日本語も使える機械があるので、自分のホームページを開いてみたのだが、ちょっと変なフォントが出てくるものの、見る分にはさほど問題はない。隣の学生とおぼしき女性も、日本のサイトを見ていた(でも日本語を話せる訳ではなかったが)が、このようにして日本の情報をいち早く手に入れるのである。文化侵略とも言われそうだが、日本を理解するにはいい手段だろう。

 ただ日本語入力に関してはうまくいかず、文字化けを起こしてしまった。マイクロソフト社の日本語入力システム(無料)をインストールすれば解決するのだが、そこまでの需要はないようだった。



7.IMF時代は?

 あれだけ騒がれたIMF時代であるが、現在も残っており、すっかり市民生活になじんでしまった感じさえする。

 街では未だにIMF価格破壊の看板を目にするし、食堂のメニューなどにもIMFセットなどの形で残っている。このまま廉価なものをIMFと呼ぶことが続くのであろうか?

 話は全然違うが、IMFならぬLAカルビなる看板を見かけた。早速頼んでみると、伝統的なカルビ肉ではなく、骨の周りの肉を骨ごとスライスしてステーキのような形にしたもので、これに多めのタレをかけて焼くのだ。韓国食文化に食いこむIMFとLA、どちらも自然な形で同化しようとしている。



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