続アジア見てある記(73)
ラオス人民民主共和国(9)
アジア光俊
1.免税店専用ビール
ノーンカーイから橋を渡ってラオスに入るわけだが、未だにビザが必要である。ヴィエンチャンの空港でもビザが取れるが、橋経由でもこれは可能である。飛行機のように、観光客が集中して入ってくるわけではないので、ゆっくりと手続きをしていても大して時間はかからない。空港と違って、橋が開いている時間は長いので、この「ビザ販売サービス」は朝6時から夜8時までの営業時間になっている。費用は30USドルだが、土日の終日と平日の6時〜8時、16時〜20時までは、時間外手当が加算されて31USドルになるのはご愛嬌だ。
橋の横には免税店があるのだが、価格はバーツ表示になっている。タイ人観光客が多い事と、現地通貨であるキープの為替が安定しておらず、外貨兌換性がなくなっていることが原因だ。ここでの目玉商品はビールである。タイだと1缶20〜25バーツ(60〜75円)はするのに、ここではその半額程度で買えてしまうのだから。ところがそのビールも変な価格設定になっている。この友好橋とヴィエンチャン市内の中間に工場を持つビアラオが6本88バーツで売られているのに対し、ヴィエトナム・ホーチミン市で造られている「333(バーバーバー)」は、6本73バーツなのだ。輸送コストを入れてもこの値段だから、価格競争力にかなりの違いがあることがわかる。免税店では見かけるヴィエトナムビールだが、街でみかけることはない。これは高関税をかけて事実上輸入ができなくなっているためだ。ラオスもASEAN加盟によって域内からの輸入に対する関税を下げる事になっているが、ビールについては、煙草や自動車とならんで「一般的例外品目」として引き下げ対象から外されている。
2.橋から市内へ
(タラート・サオ前) |
橋の周囲は広大な駐車場、または、空き地で、そこに路線バスが来るのであるが、客待ちのトゥクトゥク(三輪自動車)やタクシーが数多く並んでいる。当然客引きが行われているのだが、一応大きな看板に主要地点までの料金表が書かれている。この看板、車種と行き先が縦横に書かれた簡単なものなのだが、車種のところに申しわけ程度に英語が書かれているだけで、後は全てラオス語という代物なのだ。
我々はしばらくバスを待つ覚悟でいたのだが、一人の運転手から「あなたはラオス語を話すから、乗合並みの料金で乗らないか?」という申し出があったため、一人4000キープ(約50円)で45分の旅にでることにした。ちなみに1台貸切の場合は150バーツ(約450円)である。
下車は一番の繁華街であるタラート・サオ(朝市)前だったのだが、日本政府の援助で建設されたバスターミナルの目の前に、なぜか勝手にバス乗り場ができていて、民間のバス会社が営業をおこなっているのだ。ここからカンボディアに近いラオス南部の都市パークセーまでのバスが1日3便出ているのだが(距離は約620キロ)、料金は26000キープ(約280円)と、橋からタクシーで来るよりもずーっと安い。
3.カイソーン博物館再び
|
同行者がカイソーン博物館には行った事がないというので、9ヶ月ぶりに訪ねることにした。
さすがに今回は平日に行ったので、門のところで連絡をしてもらってすぐに中に入ることができたが、従来からあった建物に加えて革命の歴史を紹介する展示館が新たに開かれていた。展示といっても写真が主体で、当時使われていた物などはあまりない。ついでに英語の表示もないから、ラオス語が読めないとさっぱりわからない可能性が高い。
朝ゆっくりと出てきたので、見学の最後の方は昼休み時間にかかってしまった。しかし案内員の女性は嫌な顔をしないで、最後までつきあってくれた。
例によって最後に記帳をして、カイソーンバッジをいただくのだが、前回とデザインが変わっている。「時々来ていると、色々な種類が集められるかな?」などと変な事を考えながら博物館を後にした。
4.ラオス人との再会
博物館の帰り道から脇道を奥に入ったところにある市場に、写真を持って再訪した。市場のお姉さんたちが大歓迎してくれた事は言うまでもない。
|
立っていてもなんだからと、座らされてジュースを飲んでいるうちに、昼だからということでタムマークフン(青いパパイヤで作ったラオス風サラダ)が出された。こうなると皆本格的に食事の体勢となるのだ。もち米を食べる事が一般的なのだが、この日のメニューは「カオプン」という米粉で作った麺だ。これだと手間がかからないし、市場でも売っている。タイと違ってラオスでは外食が盛んではないので、食事を買ってくるは意外と手間がかかったりする。
食事の席が盛りあがってくると、誰かが生ビールを買ってくると言いだした。ビニル袋入りのビールを容器に移し替えると、生ビールの回し飲みが始まった。回し飲みだから一気飲みなのだが、今回はビールなので軽い挨拶みたいなものである。夕方からやる場合、または、昼間でも仕事をする必要がなければラオ・ラーオ(もち米で作った焼酎)の一気飲みになるのであるが、仕事の途中だからこんなものである。しかしビールとはいえ、昼間から客人を迎えるために酒を飲むというくらいだから、ラオス女性パワーは凄いものがあるのだ。
数時間してから、トゥクトゥクに乗って帰ることになったのだが、途中でエンジンが止まってしまった。プラグの調子が悪いようなのだが、見ると電極の間隔が極端に開いている。これではまともにエンジンがかかるはずがない。ヤスリなどは用意されていて、常にとりあえずは走るように直すことはしているようであるが、整備というには程遠いものがある。使い古したプラグではあるが、とりあえず電極の調整をして組みなおすとちゃんと走り出した。
この日の夜は、別のラオス人達と会食をすることになっていた。彼らは大学の先生だったり政府職員だったりで、日本に短期研修で来ていた時に私が講師となって教えた人たちなのだ。話をする内容や社会的な地位は市場の女性達とは違うかもしれないが、お客を迎える態度に変わりはない。酒を組み交わしつつ夜は更けていくのであった。
5.ヴィエンチャン空港
ラオスの玄関口ヴィエンチャン国際空港は、日本政府の無償資金援助で建設されたが、この新ターミナルの利用は国際線のみで、従来の国際線ターミナルが国内線に使われている。
国際線といっても便数が多い訳ではない。私が行った日は、ハノイ行きが1便、バンコク行きが2便の計3便しかなく、1つの便の搭乗手続きが終了してしまうと、ターミナルは閑散としてしまうのだ。
メニューはUSドル建て |
ところが1箇所だけ賑わっている場所がある。それはエレベーターだ。ラオスでエレベーターが設置されている場所といえばホテルくらいで、一般の人達、特に子供には無縁のものであるから、絶好の遊び場になっている。最上階にはレストランが入っているのであるが、決してそこに食べに行くわけではない。またエレベーターはガラス張りになっているから、遊び場として都合のいいことこのうえない。
レストランのほかに、空港にはバーカウンターのような喫茶コーナーがある。ここの運営はラオスで1,2を争う高級ホテル、ラオ・ホテル・プラザによるもので、表示は全て英語、料金はUSドル建てである。メニューでおもしろいのはビールだ。これは2種類あって、1つは輸入ビール、もう1つは輸出ビールとなっているが、これは缶に入ったビアラオ(ラオス唯一のブランドのビール)なのだ。この辺の国は「輸出品質(Export Quality)」という言葉が大好きなのであるが、メニューにImportとかExportと書かれると面食らってしまう。
実はここでケーキを頼んでみたのだが、ちょっとしたハプニングがあった。実はオレンジケーキ、チョコレートケーキ、レアチーズケーキの3種類を頼んだのだが、オレンジケーキとレアチーズケーキは電子レンジで温められて出されたのだ。さすがにチョコレートケーキを温めるとクリームが溶けてしまうのでやらなかったようだが、レアチーズケーキを温めるというのは初めて見た。味の方はというと、酸味のあるレアチーズが生暖かくなっていてこの世の物とは思えない味に変わり果てている。
何でレアチーズケーキまで温めるのかと聞くと、冷たいままだと固いからだという。「でもお客は嫌がるんじゃないの?」と問い詰めると、さすがに「何人かは冷たい方がいいと言う」と返ってきたが、それはお客の多くが口に出さないからだと思ってしまうのは私だけであろうか。
6.凄いぞ!ヒヨコ隊!!
実は昨年8月から、ラオス航空国内線の予約・発券が日本でもできるようになったことを皆様はご存知だろうか? 予備日は入れておかないと安心できないものの、おかげで予定を組むことがかなり楽になった。
|
今回はラオス北部、中国やミャンマーの国境にほど近い地域を回ることにしたのだが、まずは飛行機でルアンナムターという都市に行くことにした。日本を出るときには50人以上のオーバーブッキングになっていると聞かされたので、相当あせって、念のためラオスに入った日(搭乗する2日前)からリコンファームしたのだが、当日すんなりとチェックインする事ができた。
このラオス航空国内線だが、最も安全と言われているのがフランス製のATRという50人程度乗れる双発プロペラ飛行機で、これは国際線を中心に使われている。この日のフライトは朝9時にハノイに向けて飛び立ち、13時に戻ってきたら13時半にはラオスの古都ルアンパバーンに向けて飛び立たなくてはならない。そしてそれが15時半に帰ってきたら、今度は16時にバンコクに向けて飛び立つのだ。本当に休む暇のない飛行機である。そんな訳で、点検や補修部品は大丈夫だといわれているものの、安全だとは思えないという人も少なくない。
では主力飛行機はと言うと、中国製の運輸七型、運輸十二型という双発プロペラ機で、こちらはそれぞれ52人、17人乗りだ。また路線によってはヘリコプターも飛ばしているので、興味のある方は試してみてはいかがだろうか? しかし安全性に関しては、極めて疑わしい。
さて、我々の乗るルアンナムター行きだが、空港職員に聞いたところ運輸七型という大きい方の飛行機だという。待合室は多くの人と荷物で一杯だ。搭乗券の色が行き先によって分かれているらしいが、我々と同じ黄色の搭乗券を持った人の一団を見ると、横に穴が空けられたうすべったいダンボール箱を大量に持っている。よく見ると箱の中身はヒヨコで、それを機内に持ち込もうというのだ。今までも魚や鶏と一緒に飛行機に乗ったことがあるから驚かなかったが、さすがに量は多い! 我々は彼らをヒヨコ隊と名付けることにした。
先に別の行き先の乗客が駐機場へと歩いていく。数を数えて見ると、ぴったり17人だ。小さな飛行機は満員に違いない。
じきに我々の番が回ってきた。この運輸七型は、座席の間隔が必ずしも一定ではない上に自由席だから、楽をしようと思ったら、真っ先にいい席を確保しなければならないのだ。
機内の中間付近に席を確保すると、横の方からピヨピヨと。見れば通路を挟んで隣の席にあのヒヨコ隊が乗りこんで、例の平べったい箱をいくつも並べていたのである。